チリ人の口からこうしたことを聞いても驚きません。ダニエラ・ガレトンの出身国であるチリは、太平洋に面し南北に細長く延びています。毎朝、目を凝らして波を見つめていた幼い頃から、ダニエラは少しも変わっていません。海のそばに住み、浜辺近くで眠り、仲間とサーフィンをし、渦を集めています。
彼女が描くのは船乗り、笑うカモメ、そして豊かな顎ひげのライトモチーフの船長です。海底の漁網にタコの触手が絡みついています。甲板に立ち、塩っぽい海風を吸い込む描き手の様子が目に浮かぶようです。船長は帽子、縞模様のジャンパー、着古したピーコートを着て、誇り高く毅然として立っています。大地の上のサイレンのように、ダニエラは冷静かつ巧みな手法で当世風の再解釈を行いつつ、伝統的な表象を描き出します。
描画や絵画を始めたきっかけは?
思い返してみると、幼いころからスケッチやアートに魅かれていました。突然浮かんだアイディアから、それまで存在していなかったものが生まれる、というのは、本当に素晴らしいことです。思い付いたことを描くとは、アイディアを純粋な形で具体化することです。私も妹も、何かを創造しなさい、何かを作りなさい、アートを通じて自分を表現しなさい、と絶えず母に言われながら育ちました。「そのまますぐ使えるおもちゃ」のようなものを与えられたことは一度もありません。レゴやクレヨン、粘度など、自分で作らねばならないものばかりでした。
高校を卒業すると、自然の流れとしてデザインの勉強を始めました。一番好きなことを生涯の仕事に出来るのは有難いことです。ハンブルクで数年働いた後、2010年にサンセバスティアンに移住しました。そしてそこで、イラストと海という私が愛着を持つ2つのものが一つになったのです。それからイラストに専念するようになりました。
それが自分の人生でとても大切なものだと気付いたのはいつですか?
初めて「生涯描き続けることができる」と思ったのは、ひげを生やした漁師の絵を木材の上に描いたときです。「そうだ、これだ」と感じるものがありました。私が大好きな二つのものを一緒にして、そこから何かを創り出せると気付きました。
アートはバスク文化の重要な構成要素ですか?
バスク文化ではアートはとても重要な役割を果たしていると思います。多くの若いアーティストが素晴らしい創作活動をしており、新たな技法を探っています。地元の人々は新たなアイディアや新進のアーティストにとても好意的です。Arteuparte、The balde、Lokalirriなど、ここにはアートと文化をサポートする素晴らしい雑誌がたくさんあります。
あなたにとって海は欠かせないものですか?
まさに海が私のインスピレーションの源となっています。私のアイディアは全て海から得たものです。海に潜っていると強い創作意欲が湧き上がってきます。もの心ついてからずっと私は海が大好きでした。青い海面の下に、私たちの知らないたくさんの生き物がいる、というのは、まさに考えただけで胸が躍ります。
私は海との強い繋がりを感じながら成長しました。家族はみんなダイビングとサーフィンが大好きでした。そして幸運にも、サーフィンとダイビングを愛する海の活動家である男性と出会うことができました。このように海はまさに私たち家族の中心であり、家族全員が海を愛していました。
あなたの絵には必ず漁師が描かれています…
また私の絵では、漁師が重要な役割を担っています。私は海に人生を捧げる人々を大いに尊敬しています。漁師を描くことで、海を心から敬愛する全ての人を見習い、讃えたいと考えています。その誰もが、人間が生きるのに海がどんなに重要かに気付いているのです。
*何を使って描いていますか?
主にポスカとペンシルを使っています。また木材をキャンバスとするのが大好きです。そうすることで暖かみのある作品になると思います。
サーフボードに描くのは初めてですか?
ええ。実はドキドキしていました!今までボードに描いたことはなかったですし、見ている人の前で「生で」描くというのも初めての経験でしたから、本当に緊張しました。
どんな風になるか、想像もつかなかったのですが、震える手で描いていくうちに、コツがつかめ、自信を持って最後まで描くことができました。リップカールとPOSCAのチームは本当に協力的で、最初から私のことを信頼してくれていました。本当に素晴らしい経験でした!そして支えてくれた主人と全ての友人に感謝しています。
ボードに描いたキャラクターは、何から発想を得たのですか?
スリオラでのセッションがとてもよかったので、そこから思い付きました。砂だらけの足と、塩水に濡れた髪…そして海の神であるポセイドン…ポセイドンは海を守るための戦いで目を失ったのです。でもそれはまさに意義のある戦いでした!